事業紹介

文化財保護

  • 窒素を利用した低酸素濃度殺虫処理

    近年、殺虫を目的とした包み込み燻蒸を実施する場合、薬剤を使用せずに人体、作品(文化財、美術品)、環境に対して安全安心な処理方法が推奨されています。薬剤を使用しない包み込み燻蒸方法には二酸化炭素法と窒素法があります。

    文化財の分野で二酸化炭素による燻蒸がはじめられて約10年が経ちます。二酸化炭素は一部の鉛含有資料に対しては、条件によっては影響を与える可能性があります。また、環境中の濃度もビル管理法で1000ppm以下と規制されています。

    一方、窒素は空気中に約78%存在し、人体、作品(文化財、美術品)、環境に対して非常に安全性が高く、法律による規制もありません。しかし、これまで実用化されている空気中の窒素により低酸素濃度殺虫処理を行う装置では、大型サイズの作品(文化財、美術品)を包み込んでの殺虫処理はできませんでした。

    その点をカバーし、二酸化炭素と同等のテント・サイズにも対応できる新たな窒素ガスによる包み込み殺虫処理方法を開発しました。 開発した「窒素を利用した低酸素濃度殺虫処理」方法は、燻蒸期間が比較的長期に渡りますが、多くのメリットがあります。

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    【メリット】
    • 大規模サイズに対応可能
    • ほとんどの文化財質に対して、安全性が高い
    • 窒素の湿度調整が可能
    • 残留しない
    • 環境に対する安全性
    • ほとんどの昆虫に対して有効
    • 健康被害が極めて低い
    【デメリット】
    • 燻蒸期間が長期(4週間)

事例紹介:
静岡県立美術館における低酸素濃度殺虫処理

静岡県立美術館様で屏風・絵画等をエコミュアー・バリアフィルムで包み込み、窒素ガスを用いて低酸素濃度殺虫処理を実施したケースでは、4週間のホールド後、供試虫(コクゾウムシ)は100%致死を確認できました。

  • イメージ2対象作品を包み込んだ状態
  • イメージ3湿度調整機を経由して湿度調整した窒素ガスをテント内へ導入します

エコミュアーバリアフィルム内の酸素濃度推移

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酸素濃度グラフ:

酸素濃度は4週間の間、設定した3点の測定ポイントすべてが0.0%を維持し、置換終了から開放まで濃度変化は認められませんでした。

低酸素濃度殺虫処理中の温湿度推移

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温湿度グラフ:

温湿度はエコミュアーバリアフィルム内は安定した状態を維持しました。室内の湿度が大きく変化しているにも関わらず、エコミュアーバリアフィルム内では僅かな変化しか認められませんでした。

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使用した供試虫:

4週間のホールド後に開放した結果、供試虫のコクゾウムシは100%致死(*)を確認しました。

効果判定書

*文化財虫害研究所「効果判定書」