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食品衛生の豆知識 -毛髪混入対策編-
「毛髪混入対策の『落とし穴』」

イカリ消毒株式会社 
大音 稔

 前回、「持ち込まない」原則と「落とさない」原則から考えられる毛髪混入対策について解説しました。しかし、現実には成果が出ていない(毛髪混入事故が減らない)食品製造現場が多いのが実情です。それはなぜなのでしょう?今回は毛髪混入対策の「落とし穴」と対処方法を確認しましょう。

1. 「毛髪混入対策は簡単」という落とし穴

● みなさんの食品製造現場で実施しておられる毛髪混入対策はどのようなものがあるでしょうか?以下は多くの製造現場で実施されている毛髪混入対策の改善策です。

  • 粘着ローラーがけの方法の見直し
  • エアシャワーの導入
  • 帽子・ユニフォームの変更
  • ルール順守のための教育の再徹底
  • 入場時の身だしなみ点検強化

● 費用がかかるものもありますが、対策としては実施が難しいものではありません。したがって、毛髪混入に困っている食品製造現場は安易に取り組み、かつ、取り組んでいることに満足しがちな対策です。

毛髪診断調査の内容・落下毛髪の採集 イメージ

● しかし、これらの対策はあくまでも「起こったことへの対処療法」であることが多く、混入事故が発生した原因を突き止めた上での対策でなければ結果は伴わないのです。

● 原因を追究するために、今一度、製造現場の現状を精査する(毛髪診断調査)ことが必要です!(11ページ)

● 毛髪診断調査の結果を分析すると、下記のような原因が導き出せます。

毛髪混入の原因 イメージ

◆つまり、毛髪混入対策の管理システムの不具合が原因であることが多く、これを見抜けるか否かが毛髪混入対策を成功させるカギになります!

2. 「毛髪混入対策のためには従事者教育が重要」という落とし穴

● みなさんの食品製造現場では毛髪混入対策の従事者教育をどれくらいの頻度で行っているでしょうか? 「毛髪管理=人の管理」と言われているので、多くの製造現場が従事者教育に力を入れておられると思います。

● 個々の従事者がやるべき毛髪混入対策とは何があるでしょう?例えば、以下のようなものがありますね。

  • 帽子は毛髪がはみ出さないようにかぶる
  • 粘着ローラーは頭の先から足の先までまんべんなくかける
  • エアシャワーでは2回まわって体をはたく

● いかがですか?どれも実施すること自体は極めて簡単なことで、専門的な知識やスキルを必要としません。

● しかし、簡単なことゆえに見落としていることもあります。

  • 簡単なことであるため、ついつい手を抜いてしまいがち
  • 簡単なことではあるが、日常生活では体験しないこと(製造現場に入って初めて実施)
  • 簡単なことだからこそ、毎日毎回しっかりと実施することが必要不可欠

◆毛髪混入対策では「覚える」ことよりも「慣れる」ことが重要なのです!つまり、重要度が高いのは“教育”よりも“訓練”なのです。
具体的には、管理者が定期的に製造現場を巡回して、毛髪混入対策のルールが守られているかをチェックし、ルール通りできていなければ改善するとともに、何故ルールを守れないかを聞くことが重要です(叱責してはいけません)。このような活動自体が「訓練」であり、従事者が簡単ではあるが継続して実施することが困難な毛髪混入対策に「慣れる」ことに繋がるのです。