特集|イカリ消毒株式会社

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食品製造現場における総合的な異物混入対策の考え方と進め方|プロフェッショナルに訊く

イカリ消毒株式会社 CLT研究所 大音 稔

本部業務紹介|CLT研究所

1. はじめに

食品衛生法の第6条4項で「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」について製造販売を禁止することを明記している。しかし、何が異物である記述は明確ではない。一方、消費者の立場では、食品中の不快あるいは不安な要素、すなわちいつもと異なる「何か」を目で見て気が付いたものが『異物』なのであろう。
過去の食品事故事例では、様々なものが苦情として申告されているが、食品中の異物は食中毒のような明らかな健康被害をもたらすものは少ないこともあり、法律上の区分で考えられるほど明確ではない。異物の判断基準は形や大きさ・性状・危険性で決められるものでなく、異物と消費者側が感じる可能性のあるものすべてと考えなくてはならない。製造者側の概念で基準を考えるのではなく、消費者の目線に立って苦情の予測を的確に出来なければ、異物混入事故は必ず発生する。したがって、様々な種類の異物が混入する可能性を製造現場で的確に想定し、その混入する原因を偏りのなく管理することが必要である。
今回、異物混入対策について、マネジメントする立場でまとめてみた。

2. 検査結果から見る異物混入の現状

近年、「食品の安全・安心」に関わる事故・事件が世間を賑わせており、食品の「異物混入」の状況・事情に大きな影響を与えている。食品に対してマイナスイメージな事故・事件が起きると、各種メディアによる報道が過熱し、消費者が食品への不安を募らせる。不安感を抱きつつ食品を食べるため注意深くなり、“いつもと違うもの” が目に付くと、「何だろう? 大丈夫なのだろうか? 」と異物混入苦情として申告するという状態に陥る。事故・事件が異物混入と関係のないことでも、異物混入の苦情件数が増加している理由である。しかも、これまでは一見して分かる大きな物やイメージの悪い物が異物として目立ったが、近年は目に見えるかどうかの小さなものが著しく増加している。小さな異物は一目で判断できないために分析・同定の専門業者への依頼も必然的に増える。

〈図1 イカリ消毒㈱の検査部門に寄せられた異物検査 依頼数の推移〉
イカリ消毒㈱の検査部門に寄せられた異物検査 依頼数の推移

3. 異物混入は何故減らないのか?

食品業界では異物混入事故を減らすために、ハード面・ソフト面でさまざまな対策を施している。にもかかわらず、異物混入は減っていない。
異物混入が増加する一因は、様々な食品の事故事件から連想される消費者の不安である一方、食品製造企業の異物混入対策の遅れが「異物が商品に混入する事実」を減らすことができていないことも考えられる。
多くの食品製造企業は異物混入発生時に次のような対策を行う。

①該当異物の検査を行い、異物そのものの情報(材質・形状・状態等)を把握する。
②その情報を基に該当異物が製造現場にて混入する可能性を探す。
③混入の可能性を発見すれば、必要に応じて応急処置を行う。
④これらの顛末を苦情対応の報告書としてまとめ、取引先または消費者に説明する。

問題は、「取引先は納得してくれた」「消費者は怒っていなかった」など④ で活動を終了してしまうケースが多い。
ここまでの流れは「クレーム対応」の取り組みであり、再発を防止するため活動には至っていない。多くの食品製造企業は、異物混入対策を対処療法に終始しており、一時的には効果が出たとしても、また同じような異物混入が起きてしまう可能性が高い。
その理由は、異物混入に至った「原因」を明確に出来ていないからである。異物混入の再発を防止する活動とは、混入の原因を明確にし、その原因をなくす、または低減するための活動に他ならない。

〈図2 異物混入の再発防止活動手順〉
異物混入の再発防止活動手順

一方、クレーム対応は、混入の原因を製造現場で探すことという考え方もある。食品製造企業は該当する異物が混入する可能性を製造現場で行っている。しかし、ここで探している混入する可能性は該当異物に関してのみである。再発防止には、さらに深い原因究明が不可欠である。
原因究明とは、直接的に混入した原因(例えば金属片の場合、「使用備品が欠けた」など)だけではなく、混入に至った経緯の原因(備品が欠けたことに気づかなかった。あるいは、欠けたまま放置してしまったなど)を明らかにすることである。時間的に余裕のないクレーム対応だけでは、ここまでの分析が出来なくて当然である。再発防止に繋がる原因究明はクレーム対応が一段落してから取り組むべきことである。

4. 異物混入対策のマネジメントシステム

原因究明や、原因究明後の改善活動には、マネジメントシステムの考え方が不可欠である。
異物混入対策のマネジメントシステム作りでは、異物そのものの管理ではなく、製造現場で混入にいたる原因の管理が重要なことを十分に理解する必要がある。したがって、異物混入対策のシステムは「現場に適したものであること」と、「各種の活動が整理され体系的であること」が前提である。この2点を考慮して、製造現場で失敗の少ないシステム導入手順を考えると次のようになる。

①管理対象となる異物の理解
 →管理方針の決定と管理の基礎の理解
②異物混入発生の要因を現場で調査
③初期改善
 →管理する土壌の基礎作り
④記録に基づく検証と継続的教育訓練
⑤ルールの文書化・体系化

5. 管理システム構築の手順

5.1 管理対象となる異物の理解

管理ルールはすぐに作らず、自社に必要かつ適切な管理方針をまとめることがシステム作りの第一歩である。特に、全てのことを一気にできないので、やるべき優先課題(例えばどんな種類の異物を解決したいのか)と製造現場ができる能力を考えて、必ず効果・成果が出せる目標を決める。
次に、マネジメントシステムの要素(PDCAの要素)を現場での活動へ転換することと、現場での管理のための様々な具体的知識を整理しておくことが必要である。
食品製造現場ではマネジメントシステムに不慣れな場合が多い。できないルールや文書化を先行させ現場になじまない仕組みを作るなど、現場での応用を前提にしたシステムの要素の理解がなされていない。異物混入対策におけるPDCAサイクルは次の手順である。

◆計画 PLAN

→ルール作りと導入計画のための調査分析
→システム導入のための基本計画の作り
→現場で運営できるための暫定ルール作り

◆行動 DO

→導入の基本計画とその主旨の理解
→暫定ルールの意味・意図の理解
→全社的な活動の開始

◆検証 CHECK

→個別の活動の実施状況の確認
→活動結果の効果の確認
→不具合の要因・原因を確認

◆改善 ACTION

→確認された状況の相互把握(会議を開く)
→問題の要因の解決策を決定(会議で決する)

上記に該当する内容を製造現場の管理に置き換えることで適切な改善計画や現場管理の計画が立案できる。システムの発想に慣れている企業も「生きたシステム」の構築に『システムとは何か』を再考するべきであろう。
異物混入の発生についてのメカニズムや異物管理の知識・テクニックを理解することも重要である。異物混入事故の発生原因を考えると単純ではない。多くの場合、従事者のメンタル面や組織内の人間関係などの人間的要素も含めた多様な要因が複雑に絡んでいる。異物混入の要因がどのような条件・状況で生じるのか十分に理解しなければ、管理すべき要件を見落としてしまう。異物混入対策の成功には、システム整備と同様に管理の精度向上が必要となる。特に、混入事故が生じる様々な可能性ときっかけを想定する部分が重要であり、一例として、異物混入が起こりやすい製造現場の様子を表1に示した。

〈表1 異物混入事故が起きやすい製造現場の状態〉
異物混入事故が起きやすい製造現場の状態

5.2 異物混入発生の要因を現場で調査

決定した管理方針をふまえた各種のルール作りは、机上で行うと現場の実践性が極めて乏しくなる。筆者は異物事故の原因が、現場での無理なルールであったことを数多く経験している。現場でできる的確なルール作成には、現実を良く見極めることが第一歩といえる。方針に基づいて製造現場で何が行われているかを見抜くこと(診断調査)が必要である。
異物混入対策の診断調査は、様々な可能性を考えて行うことが必要となる。工場では製造現場のみならず製造施設周辺から工場外周も含めた調査の対象となる。様々な可能性を考えて従事者の身の回りから製造機械の駆動部、制御ボックス、さらに現場事務机の中等から工務室まで、普段異物混入対策での点検等を行っていない場所があれば、必ず確認しておく。
確認された事実から、問題の本質を考えずに表面的事実への対策をいきなり進めることは不適切である。診断調査の大きな目的は『再発を防止するための活動』であり、『異物混入の要因になること』を探し出すことが必要である。『なぜ、この様なことが生じたのか?』をよく考えることが極めて重要なことであり、単純な対策先行は決してうまくいかない。
分析不足の事例に「”ルールがあるから大丈夫”(管理されているはず)という先入観で問題点を見過ごす」ということがよくあり、システムに慣れた現場はこの傾向が強い。このような失敗を減らす意味でも、現場の状況とすでに存在するルールとの整合性を精査する。このときのルールは文書化されているものだけでなく、現状の未整備なルールや不文律のルールも含めて行うべきである。文書がなくても、現場の創意工夫で励行・遵守されているものも少なくない。現状分析をはじめるにあたり確認すべき最低限度のルールを表2にまとめた。

〈表2 現場ルールの確認事例(異物対策の場合)〉
現場ルールの確認事例(異物対策の場合)

さらに、ルールだけでなく、ハード面の不具合も調査する。防虫対策中心のチェックリストを例に挙げる。

〈表3 有害生物防除チェックリスト(ハード面)〉
有害生物防除チェックリスト(ハード面)

現実が十分把握できても、その結果を管理に変換できる能力を現場担当者が理解できていなければ、机上のルール作りと大差がない。つまり、現場管理者は現場の現実と今後のあり方を具体的に共有する必要がある。共有は、管理の方針・改善計画の概要・主旨の理解に最も効果的な手段といえる。
これらを理解するためにには、体験学習と討論を組み合わせたワークショップ形式の学習会の開催が有効である。討論を設けることにより、管理者として何をすべきかが整理され、現場の従事者を有機的に活用できるようになる。
ワークショップ形式の学習会で、製造現場で起きる問題の原因究明について討論する。実際の問題を題材に、直接的な対策を考えるのではなく、「この問題が起きている原因は何? → その原因の原因は何? → さらにその原因の原因は何?」と原因を出来るだけ深く考える習慣をつける。このように原因を追究していくと、単に「従事者が悪い」や「時間がない」などに代表される短絡的な原因ではなく、製造現場のマネジメントシステムの弱点が浮き彫りになる。

5.3 初期改善

調査結果によっては製造現場の原状回復とシステム管理への慣れを目的とした初期の改善作業が必要となる。表4 に示した項目で9つ以上該当するようであれば、初期改善を行う価値がある

〈表4 初期改善の実施を検討すべき状況〉
初期改善の実施を検討すべき状況

初期改善とは不要物廃棄や原料・資材の識別・区別の徹底、集中清掃などの5S活動や、老朽設備の交換や集中保全などを指している。資源投資を見直すことは以降の管理の効率向上につながる。
この活動で大切なことは、活動を行為優先にしないことと全社的活動にすることである。そのためには次のことを活動の要素に入れる。

◆活動前の目的や意図の共有(暫定の目標・従事者へのルール伝達)
◆全員参加の5Sの取り組み
◆活動後の現場確認とミーティング
◆従事者全員への効果や成果の伝達

この要素を踏まえることにより、単なる大掃除(現場改善)に終わらせず、活動を通してシステム管理の発想に慣れ、体感することができる。初期改善のフローモデルを図3に示した。

〈図3 初期改善の取り組みフロー〉
初期改善の取り組みフロー

5.4 記録に基づく検証と継続的教育訓練

診断調査結果に基づく活動や初期改善によって製造現場は改善されることが多い。しかし、そのままでは問題が再発しやすく、定期的な現場確認と記録に基づく会議運営により、検証活動を高める必要がある。
記録も単なる結果の記入では効果が低い。記録は、①実施した結果の記録、②実施結果の確認状況の記録のいずれに効果を見出すかを検討する。この記録の種類によって管理者が確認する程度も変化するので注意が必要である。管理者が確認すべき点は、記録の記入状況のみならず、現場の管理状況と記録の記入結果を照らし合わせることである。実際の製造現場において、記録と現場の状況が食い違っていることはしばしば見受けられる。この食い違いの事実が悪いというのではなく、「なぜ違いがあるのか?」についてその理由・原因を解析することで、現場の改善と異物混入の予防に効果が出る。
記録と現場の格差を埋めるためには仕掛けが必要で、そのために会議の開催と効果的な運営が重要となる。会議では現場を点検した側が一方的に事実を伝えることに終始しやすい。会議の目的は悪い結果を突きつけるのではなく、点検・検証の理解や確認された問題の原因究明・考え方の討論にある。この討論を経て各管理者の能力も向上する。機能的な会議進行の考え方は図4にまとめた。

〈図4 会議の進め方の工夫〉
会議の進め方の工夫

会議は、点検者の現場観察の能力向上にも役立つ。現場点検の力量に不安を感じるなら、点検者の能力の均一化を図るため、現場点検の訓練を検討すべきであろう。
能力の均一化の手段の一つとして現場点検用のチェックリストを用いる場合が多い。チェックリストに頼りすぎる点検は弊害が多く、問題の見落としだけでなく、重要な原因を追究することを忘れやすい。現場点検時におけるチェックリストの利用方法を図5に示した。

〈図5 現場点検時のチェックリストの利用方法〉
現場点検時のチェックリストの利用方法

現場点検の訓練として、観察する要点などを製造現場で実地指導することもよい活動と考える。しかし、その指導を単独で実施するのではなく、会議と連動した活動にすることでさらに意義のあるものになる。

5.5 ルールの文書化・体系化

内容が定着したものは、ルールが陳腐化する前に文書として明確にする。会議進行や会議結果をまとめる帳票(議事録)などもその対象になる。会議の進め方は陳腐化しやすく、重要な要件を話し合わなくなることがあるので文書化は必須である。
文書化のポイントは、言葉や文で表現にこだわらないことである。異物混入対策に関わるルールは製造作業のように手順らしく表現できないことが多い。文にこだわるあまり、複雑な表現や理解しづらい内容になってしまい、従事者が誤解や勘違いがあってはならない。表現はできるだけシンプルなものがよく、使う言葉は箇条書きで図や表、写真を利用し従事者に伝わりやすい工夫が重要である。

6. 終わりに

食品製造現場のマネジメントシステムづくりを中心に解説してきた。手順にそって活動することで、多くの食品企業が当面の問題や予防的管理について大きな成果を出している。今回解説している内容はあくまで基本ケースである。製造現場の人員や広さ、管理状況などを総合的に判断して、様々なアレンジも必要である。製造現場での人間関係や従事者を動かす仕組み作りにはコミュニケーションの工夫を考えなくてはいけない。

参考文献

  • 江藤諮、島田博行:5Sを基本とした非生物系異物の管理システムとその運用.人を動かす食品異物対策、サイエンスフォーラム、201-254(2001)
  • 伊藤真弓、小曽根惠子、金山彰宏:横浜市における食品中の異物混入事例.ペストロジー誌、25:11-16(2010).
  • 島田博行:食品工場における食品安全の問題解決とISO22000活用の考え方.食品装置機械、6:69-77(2007)
  • 大音稔、島田博行:異物混入対策.機能性食品GMPハンドブック、サイエンスフォーラム、209-221(2008)
  • 渡部玄、富田哲司、佐野千寿子、今村太郎、宮ノ下明大:小麦粉に混合したヒラタチャタテの摂取における体調への影響.家屋害虫、29:49-53(2007).
  • 林喬:食品部門別異物混入クレームの分析.食品異物クレームデータ集、環境文化創造研究所、5-43(2001)
  • 大音稔:食品製造現場における具体的な現場改善の進め方.現場がみるみる良くなる食品衛生7S活用事例集2、日科技連、21-42(2010)
  • 大音稔:不織布製造現場において検討すべき異物混入対策.NONWOVENS REVIEW Vol.20 NO.4、53-59(2010)

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