特集

月刊「クリンネス」より

日本の警戒すべき感染症
-感染症から身を守るために-

シリーズ② 結核 
/バイオメディカルサイエンス研究会 副理事長
木ノ本雅通

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月刊クリンネス

結核の現状

「結核はまだあるの?」という声を耳にすることがあります。これはとんでもない認識の誤りです。確かに結核は、「不治の病」と言われていた時代から比べると著しく減少しましたが、現在でも世界で一年間に170万人(約20秒に一人)、日本でも2155人(平成21年中の概数)の死亡者を数える第一級の感染症なのです。また、日本の結核患者総数は現在約6万人、毎年新しく登録される結核患者数は約2万4千人という現状にあります。
結核症は、ご承知のとおり「結核菌」によって引き起こされます。結核菌は棒のようなかたち(桿菌=かんきん)をしており、長さが2〜4㎛(2/1000〜4/1000㎜)、太さは長さの約1/10程度の大きさです。結核菌は他の病原体にないいくつかの特徴があります。例えば、菌が互いにくっつきやすい(凝集)こと、菌がロウのような厚い膜で覆われており酸やアルカリに強い抵抗力(抗酸菌)があること、菌が増えるのに要する時間が長いこと、などが挙げられます。

どのように感染するのか

結核は、空気を介して感染(「飛沫(ひまつ)核」感染)します。結核の飛沫核とは結核菌そのものをいい、結核患者の咳や会話あるいは病院や実験室等では結核の試験検査などの際に発生する飛沫に含まれていることがあります。結核菌の飛沫は空気中に放出されると周囲の水分が急速に蒸発し、結核菌が裸の状態(「核」)となり、空中を浮遊します。これを吸入すると肺の奥の方まで菌が入り込み、そこに定着することによって結核の感染が成立することになります。
しかし、結核は感染しても必ず発病(発症)するとは限らず、健常者の多くは発病せずに済みます。発病するのは感染した人の10〜20%と言われています。これは、主に生体の免疫(細胞免疫)が働いているために菌が分裂・増殖できないからです。ところが何らかの要因で免疫力が低下し、菌の増殖力が強まると発症し、重症の場合は菌が肺に止まらず全身にばらまかれることがあります(「粟粒(ぞくりゅう)結核」)。

感染はどのようにして起るか

感染するには、三つの条件が必要となります。一つは、感染源(病原体を排泄=はいせつしている人や動物あるいは病原体に汚染された飲食物・器物)、二つ目は感染経路(感染源から排出された病原体が次の宿主に到達する経路)、三つ目は、感受性宿主(病原体に抵抗力のない人や動物)であります。これらの三つの条件の一つを遮断することによって、感染は成り立たなくなります。すなわち感染防止対策の最も基本となる事象です。

結核が疑われるときは

結核の初期によくみられる症状は、「咳」、「痰」「発熱」、「倦怠感」、「胸痛」などのほか、「食欲不振」や「体重減少」なども顕われます。このような症状が二週間以上続く場合は早期に医療機関で受診すべきです。
結核が疑われるときは、まず胸部X線検査と喀痰(かくたん)検査(結核菌検査)のほか、近年は「QFT検査」(従来のツベルクリン反応検査に代わる診断法)等により、症状や既往歴などから総合的に判断されて診断が下されます。

結核の予防対策

結核の予防対策は、結核を正しく知ることがその第一歩です。日常的な予防策は、他の感染症等と同様、「睡眠・運動・栄養」などに配慮した健康管理に尽きます。乳幼児にはBCG接種が必須の予防手段です。
また、住居や職場および施設など、人が集まり、空気が停滞しがちな環境に注意を傾けるとともに、排菌者の早期発見に努めることなどが予防対策の基本となります。