特集

月刊「クリンネス」より

日本の警戒すべき感染症
-感染症から身を守るために-

シリーズ④ デング熱 
/バイオメディカルサイエンス研究会 常任理事
増田剛太

最新の「クリンネス」の情報はこちら→

月刊クリンネス

デング熱とは

デング熱は、フラビウイルス科に属するデングウイルスを病原体とする熱性疾患であり、このウイルスが蚊によってヒトからヒトに媒介されて感染が拡散します。本疾患は、熱帯・亜熱帯地方にあるアジア、オセアニア、中南米、さらにアフリカ諸国に広く分布しており、その多くがマラリアの流行地域と重複します。全世界のデング熱患者数は毎年1億人、重症型であるデング出血熱は25万人と推測されます。デング熱を媒介する蚊はヒトスジシマカやネッタイシマカですが、これらの蚊の幼虫であるボウフラは都市部の沼、池、水たまりなどで生息できます。今日の日本人海外旅行者の多くが東南アジア諸国の都市部を観光しますが、デング熱を媒介する蚊はこれら地域にも生息しているため、現地で蚊に刺されて感染し、旅行中あるいは帰国後にデング熱を発病する日本人旅行者は一般に考えられているよりもはるかに多いのです。

日本での発生状況

デング熱はわが国の感染症法で4類感染症に分類され、全例が海外で感染した輸入例です。厚労省に報告された近年の患者数は毎年50〜100例でしたが、2010年には243例と急増し注目されています。海外諸国で最近この疾患が流行していることを反映する数値と考えられ、これらの地域への旅行者が今後注意すべき感染症の一つです。

症状と検査方法

デング熱の症候は、発熱、疼痛と発疹です。すなわち、デング熱は蚊に刺されて4〜7日と短い潜伏期の後に38℃以上の発熱で発病します。臨床症状としては、このほかに全身の筋肉痛、頭痛、眼球の痛みや倦怠感(だるさ)を伴います。この発病初期の段階では「熱帯・亜熱帯地方からの帰国者に発病した高熱を伴う疾患」であり、マラリア、腸チフス、パラチフス、A型肝炎、恙虫病等との鑑別が必ずしも容易ではありませんが、デング熱では発病3〜5日後ぐらいに手足の皮膚を中心に麻疹〜風疹に似た発疹が出現するのが大きな特徴です。発疹はその患者さんがデング熱である可能性を示唆する重要なサインです。デング熱では出血傾向も特徴の一つであり、途上国では血圧計を上腕に巻きつけて圧力をかけ出血傾向を臨床的に証明することが行われます。確定診断は発病3〜5日目の血液での遺伝子検査や免疫ブロット検査、あるいは7〜10日以降の血液を用いた抗体検査により行われます。

治療方法

デングウイルスには1〜4型の4つの型が存在します。ある型のデングウイルスに感染するとその型に対して長期的な免疫が成立しますが、それ以外の型のウイルスの追感染を受けると重症型デング(デング出血熱、デングショック症候群)を発症するとされます。デング熱には特別な治療薬が無く、治療の基本は補液を初めとする対症療法です。発熱に対しては出血しやすいことなどの点を踏まえてアスピリンなどは禁忌です。ワクチンはまだ開発されていません。なお、アジア、アフリカの一部にチクングニヤ熱という感染症が流行しており、デング熱に似ていますが強い関節炎症状を伴うため診療にあたって鑑別が必要です。