特集

月刊「クリンネス」より

日本の警戒すべき感染症
-感染症から身を守るために-

シリーズ⑦ ノロウイルス感染症 
/財団法人北里環境科学センター 首都大学東京 客員教授
矢野一好

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月刊クリンネス

ノロウイルスのルーツと特性

ノロウイルスは、1968年に米国オハイオ州ノーウォークの小学校で集団発生した急性胃腸炎患者の便から発見されました。発見当初は地名にちなんでノーウォークウイルスと呼ばれていましたが、2002年にノロウイルスと正式に命名されました。このウイルスの特性は、環境中での生存期間が長いことと、少ないウイルス量でも感染が成立することです。消毒には塩素や加熱が有効ですが、アルコールは効きにくいです。

感染経路は多様

ノロウイルスの感染経路は多様です。わが国で流行が確認された当初は、ウイルスが蓄積されたカキの生食による感染が目立っていました。しかし、現在ではノロウイルスに感染した調理従事者が調理した食品を介した感染や、感染者の吐物を介した感染が増えています。特に、感染者の吐物には大量のウイルスが含まれていますので、吐物を除去した跡にもウイルスが残っていることがあります。このような吐物の残渣は、乾燥して空気中に塵埃(ほこり)となって漂うことがあります。

広く飛び散る吐物に注意

ノロウイルス感染者の吐物は広く飛び散ります。東京都健康安全研究センターが行った実験結果によると、半径2メートルにわたって飛び散ることがわかっています。もし、吐物を見かけたら、いきなり吐物の中心に近寄らず、使い捨ての手袋をつけて、2メートル以上の外側から消毒剤(台所用の塩素系消毒剤でも有効です)を染み込ませたペーパータオルなどで攻めて行くことが重要です。吐物の中心に近づいたら消毒剤をたっぷり染み込ませたペーパータオルで広く覆い、少し時間をおいてから吐物を除去しましょう。吐物を除去した後も念入りに消毒しましょう。

主な症状は下痢とおう吐

ノロウイルスに感染すると、30時間前後の潜伏期間(何の症状もない期間)のあと、下痢、おう吐、吐き気、腹痛などの症状が出ます。発熱も認められますが、高熱ではありません。このような症状はすべての感染者でみられるものではなく、中には何の症状もないまま腸の中でウイルスだけが増えて、便からは大量のウイルスが排泄されることがあります。このように自覚症状がない感染を「不顕性感染」といいます。

日本国内で多発

ノロウイルス感染症は、年間を通じて発生していますが流行のピークは冬にみられ、学校を含む規模の大きな施設などでの集団発生や食中毒事例として確認され集計されています。特に、平成18年以降は全国で集計される食中毒事件数の3割前後、食中毒患者総数の約半数をノロウイルスが占めています。

感染防御は手洗いで

手軽に実施できて有効な予防対策は「手洗い」です。流水だけでの手洗いでも効果は期待できますが、石鹸や手洗い用の洗浄消毒剤を使うとより効果的です。水が使用できないときは、擦り込み式の消毒剤やウエットテイッシュでも有効です。食事の前やトイレを使ったあとは、必ず手洗いをするように習慣づけましょう。