特集

月刊「クリンネス」より

日本の警戒すべき感染症
-感染症から身を守るために-

シリーズ⑨ 最終回 新型インフルエンザウイルス 
/国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター 第五室 室長
山本典生

最新の「クリンネス」の情報はこちら→

月刊クリンネス

新型インフルエンザとは

新型インフルエンザとは、新たにヒトからヒトへ感染する能力を獲得したインフルエンザウイルスによって起こる感染症のことです。新型インフルエンザウイルスには、「これまでの新型インフルエンザウイルス」と「これからの新型インフルエンザウイルス」があります。ここでは、前者の代表として2009年に出現した新型インフルエンザウイルス(ここでは「インフルエンザウイルス2009」と呼びます)、後者の代表としてH5N1亜型のインフルエンザウイルスを取り上げたいと思います。

インフルエンザウイルス2009

2009年に発生した新型インフルエンザは、現在では季節性インフルエンザに移行しています。
インフルエンザウイルス2009は出現してすぐに詳しく調べられ、その結果、ヒト、トリ、ブタの3種類のインフルエンザウイルスが混ざり合って生じた新型ウイルスであることが明らかとなりました。
インフルエンザウイルス2009の病原性は、従来の季節性インフルエンザウイルスと同程度とされています。しかし、重症化する例もしばしば見られ、注意が必要です。インフルエンザウイルス2009は、肺で増えやすい性質を持っているため、ウイルス性肺炎を起こしやすいことが報告されています。ウイルス性肺炎を起こしますと、急速に呼吸困難が進行しますので、息苦しさが強い場合には、早目に医療機関を受診する必要があります。

H5N1亜型のインフルエンザウイルス

次に発生する新型インフルエンザウイルスとして最も警戒されているのは、H5N1亜型の高病原性トリインフルエンザウイルスが変化して生まれると考えられている、新型のヒトインフルエンザウイルスです。
高病原性トリインフルエンザウイルスのヒトへの感染例がエジプト、インドネシア等から報告されています。現時点ではヒトへの感染力はそれほど高くありませんが、致死率は約60%と非常に高く、今後もH5N1亜型の高病原性トリインフルエンザウイルスの動向に注意する必要があります。

インフルエンザ対策

インフルエンザ対策としては、基本的な感染予防策、ワクチン、治療薬の3つがあげられます。基本的な感染予防策としては、①手洗い・うがいの励行、②マスク装着、③部屋の湿度の保持、④流行時にはなるべく人ごみを避ける、⑤栄養と睡眠をしっかり取り体力を保つなどがあげられます。
ワクチンについては、発症する可能性を減少させ、もし発症しても症状が重くなるのを防ぐ効果があります。特に高齢の方、子供、妊娠されている方、心臓や呼吸器等に持病のある方は、感染すると症状が重くなりやすいので、積極的にワクチン接種を受けておくことをお勧めします。
治療についてですが、現在、抗ウイルス薬としてはノイラミニダーゼ阻害剤が使用できます。解熱剤は、種類によってはかえって症状が重くなる場合があります。自身で判断せず医師の判断に従って服用するのが良いでしょう。