特集

月刊「クリンネス」より

バイオセーフティの基礎知識

シリーズ③ バイオハザードの発生と病原体の危険度分類 
/バイオメディカルサイエンス研究会 理事長
小松俊彦

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月刊クリンネス

はじめに

本連載の第1回では「バイオセーフティとは何か」、第2回では「バイオハザードの実態」について解説しました。第3回では標題について、バイオハザードの発生しやすい病原微生物(以下、病原体)の実験室を事例に概説します。

バイオハザード(生物災害)の発生要因

病原体を取り扱う際のどのような場合に実験室内感染が起こるかを調べた報告を見ると、発生例の多い順に、①病原体の操作中、②明らかな操作ミス、③動物実験、④エアロゾル(空気中に浮遊する病原体を含む粒子)、⑤臨床材料、⑥その他病理解剖や汚染ガラス器具が挙げられています。この中で注目されることは、動物にまつわる感染にウイルスや真菌が多いこと、臨床材料由来の感染では圧倒的にウイルスが多いこと、さらに重要なのはエアロゾル感染がきわめて多いことであります。このエアロゾルは、人の五感(見えない、臭わない等)では検出できず、また気流に乗ってどこへでも到達できるので、その対策が必要となります。一般的には、空気感染の要因として知られています。

病原体の危険度分類

病原体の危険度分類は、バイオハザード対策の基本となります。この分類は当然のことながら人に対する危険性の評価が根底となっており、次の三つの基本条件により分類されています。
その一は、病原体の人に対する病原性(起病性)、その二は、その病原体に対し人が免疫を持っているか(地域社会の病原体に対する疫学的状況)、その三は、その病原体の感染に対して確実な予防または治療法があるかです。
上述の三条件を考慮して、人に対する病原体の危険度をレベル1〜4段階(BSL:バイオセーフティレベル:1〜4)に分類して、レベル4を最高危険度の病原体として位置づけられています。このレベル4の病原体に感染した場合は重症で致死率が高く、しかも有効な予防法または治療法がないエボラ出血熱やラッサ出血熱など、国内には存在しないウイルス性の病原体であります。しかしながら、近年の国際交流の活発化に伴い、輸入感染症として懸念されるものであります。
世界保健機関(WHO)は、感染性微生物の実験室での危険度分類として、リスク群1〜4に分類し、その基準を以下のように提示しております。

  • リスク群1(BSL-1相当):個体(人・動物)および地域社会へのリスクは無か低い。
  • リスク群2(BSL-2相当):個体へのリスク中等度、地域社会へのリスクは低い。
  • リスク群3(BSL-3相当):個体へのリスクが高い、地域社会へのリスクは低い。
  • リスク群4(BSL-4相当):個体および地域社会へのリスクが高い。

この提示はWHO「実験室バイオセーフティ指針第3版」バイオメディカルサイエンス研究会翻訳によるものです。
実験施設は基本実験室(BSL-1・2)、封じ込め実験室(BSL-3)、高度封じ込め実験室(BSL-4)に分類されております。BSLの指定は取り扱われる病原体、利用できる安全設備、実験作業の安全確保に必要な機器の操作方法と実験の方法を考慮して定められています。