特集

月刊「クリンネス」より

バイオセーフティの基礎知識

シリーズ④ 実験室感染防止対策 
/バイオメディカルサイエンス研究会 理事長
小松俊彦

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月刊クリンネス

プロローグ

このシリーズは、バイオセーフティの基礎知識として、一般の方々を対象に解説するものです。第4回は「実験室感染防止対策」を取り上げ、その知識を提供致します。

実験室感染の原因と対策の基本

病原体を実験室で取り扱う際に、感染の原因となるものを過去の報告例で見ますと、大部分が感染性エアロゾル(空気中に浮遊する病原体を含む粒子)の吸入であることを示しております。従って、実験室感染を防止する上においては、実験作業中に発生するこのエアロゾルを防ぐことが重要であります。また、実験室感染を防ぐ対策の一つとして、個々の実験者が平素より、安全に通じる良い作業習慣を身につけておくことが重要であります。基本的な二、三の例を挙げますと、①実験作業中、あるいは手洗い前の手で、顔面や頭髪などに触れてはならない、②頭髪の汚染は顔面その他の汚染に繋がることを認識する、③ゴム手袋を使用しても、実験操作後は手洗いを実行する、④創傷、擦過傷、皮膚炎、抜歯創を有する者は、それによって感染しやすい病原体を扱ってはならないことであります。

防護衣と防護具

実験室で用いられる防護衣と防護具は、実験者が病原体などに接触するのを防ぐこと、あるいは熱、電気その他の物理的要因から実験者を保護するものであります。防護衣と防護具は、感染防止上欠かせないものでありますが、その役割はあくまでも第二義的なものとなります。次にいくつかの例を示します。①防護衣:オーバーオール型あるいは全面に開く部分のない型のもので、袖は長袖で手首、首回りはよく密着するもの、②手袋:前腕部までカバーできる長めの、しかも作業しやすいものを選ぶ、③顔面防護具:顔面スクリーン、保護帽、ゴーグル、眼鏡などが用いられますが、単に感染材料との接触を防ぐことであることを認識しておくこと、④呼吸器の保護具:マスクは薬剤や病原体液が直接口や鼻に飛び込むことを防ぐ以外の効果は期待できない、などであります。

消毒・滅菌

病原体は消毒あるいは滅菌することによって、その効力を失うことから、感染防止対策では重要な対策になります。消毒とは病原体を対象として、消毒薬、煮沸、紫外線などを用いて伝染力を無くすることを意味します。また、滅菌とは病原性または非病原性を問わず全ての微生物を無くすことで無菌状態を得ることであります。
消毒薬の殺菌効果は、濃度、温度、作用時間によって効力が左右され、また有機物の存在、水素イオン濃度、微生物汚染の程度によって殺菌効果が影響を受けます。消毒薬は生体と無生物の区別、あるいは消毒物の種類によって効果が異なります。消毒薬の特性をよく理解して選択的に用いることが肝要です。

エピローグ

次回の第5回からは、バイオセーフティに関係する分野、すなわち動物実験、院内感染、遺伝子操作、バイオテロについてその分野の専門家が解説する予定です。読者の方々にとって、少しでもお役に立つことを願っております。