特集

月刊「クリンネス」より

バイオセーフティの基礎知識

シリーズ⑧ 臨床検査室のバイオセーフティ 
/東京大学医学部 微生物学講座
後藤美江子

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月刊クリンネス

臨床検査室には多種多様の臨床検体が届き、多くの患者様が集まります。

感染リスク

その感染リスクは採血室、血液・尿・髄液などを分析する生化学検査室・免疫血清検査室・血液検査室・輸血検査室・一般検査室・遺伝子検査室、体組織の形態の病変を調べる病理検査室、感染症のための微生物検査室などで起きる針刺し事故や臨床検体および検査中に得られる検査材料の暴露があげられます。さらに重要なリスクは採血室および心電図、呼吸機能検査、エコー検査などの検査をする生理機能検査室における患者様と直接接触する場合です。検査場所は臨床検体の検査は院内検査と外部の検査センターで行われる場合があります。採血および生理機能検査はほぼ院内で行われます。採血室と血液を検体として扱う検査室では血液媒介性感染症(HBV、HCV、HIV)が問題になります。採血時の針刺し、血液の飛散などに注意が必要です。数年前の全国調査では、検査室内全事故1945件中、1534件(78.8%)が採血時の針刺し事故と回答がありました。HBV、HCV感染事故は数件で、HIV感染例はゼロでした。現実には血液の飛散、落下は、日常的に起きています。他に微生物検査室には抗酸菌、耐性菌などの分離培養菌が常時多量あり、病理検査室には生体材料などの組織が多数置かれています。それらの十分な管理体制が必要です。生理機能検査室ではインフルエンザウイルスの飛沫(ひまつ)感染、結核の空気感染、MRSAなどの多剤耐性菌の接触感染のリスクがあります。

標準予防策体制の徹底

以上のように検査環境の臨床検査室では、次の標準予防策体制の徹底が必須です。①検査対象を感染性ありとして接すること、②汚染区域(検体検査を行う場所)、非汚染区域(事務作業場)、清潔区域(飲食・休憩場)のゾーニングの徹底、③検体は閉鎖頑丈容器使用、落下防止、漏出防止で搬送・輸送の徹底、④検査室に出入りをして作業する者はすべて専用予防着、手袋、マスクなどの個人防護具を使用、⑤手洗い励行、⑥機器、器材の汚染防止および鋭利な器材はなるべく使用不可、⑦検体落下時、作業終了時の速やかな作業台の適切な消毒・殺菌・除染、⑧検査材料の保管・処理は適切に実施し、検査済み検体・汚染物は医療廃棄物として廃棄、⑨作業中の予防衣と外出用衣類は区別する、などがあげられます。

感染予防対策

臨床検査室の感染予防対策としては主なものとしてHBV検査・ワクチン接種、インフルエンザウイルスのワクチン接種の体制が整備されています。また、意識の向上、啓発のために感染対策講習会・リスクマネージメント講習会などの定期的な講習会、採血の新人教育、患者様に対するアメニティ教育、eラーニングによる教育などが実施されてきています。なお、現場では安全設備・安全機器機材の導入が進みつつありますが、立ち遅れは否めません。患者様に対する医療安全の責務を全うするためにも、ハード面(構造、設備)およびソフト面(安全対策の教育、制度、マニュアル)などの、より一層の充実した設備・制度が望まれます。