特集

月刊「クリンネス」より

バイオセーフティの基礎知識

シリーズ⑨ 最終回 院内感染におけるバイオセーフティ 
医療法人社団 一恵会 介護老人保健施設 はーとぴあ 施設長
エイアンドピー株式会社 学術顧問
腰原公人

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月刊クリンネス

病院には日々、さまざまな病と闘う多くの患者さんが来られます。高血圧症、糖尿病のため血圧や血糖コントロールで外来通院されている人、透析に通っている人、抗ガン剤治療を受けるために通っている人。小児からお年寄りまで、その中には免疫力が落ちている人も多く含まれています。そして発熱している人、咳をしている人、下痢をしている人、何らかの感染ウイルスや細菌を排出しやすい人も訪れます。
多くの人が集まる場所は、病原体が自らの子孫を増やすため、新たな宿主を求めて移動する絶好のチャンスとなります。そこで病院に訪れる人に求められるバイオセーフティが、スタンダードプレコーション(標準予防策)と呼ばれている咳エチケットと手洗いです。

咳エチケットと手洗い

咳の出る人は症状を病院職員に伝えて、マスクを着けて待ち合いで待つ。職員の誘導に従い、一般の患者さんの待ち合いとは離れた場所で診察まで待つことも必要です。鼻をかんだり、くしゃみの際に口で手を覆った後、もちろんトイレを利用した後などは、しっかりと手を洗いましょう。菌やウイルスは指先や指の間、親指の周りなどに残りやすいので、手全体を特に洗い残しの起きやすい部位を意識して洗う必要があります。

病院での予防対策

病院では採血や点滴、カテーテルの挿入、手術、創部の処置などさまざまな医療行為が行われます。そのため、医療行為を介して病原体が体内に侵入しないように、スタンダードプレコーション以外にも、感染経路別予防策(接触感染予防策、飛沫感染予防策、空気感染予防策)として、個室への隔離、医療者のガウンや手袋の着用、特殊なマスクの装着などが行われています。
また、感染症の治療として細菌感染症に対しては抗菌薬が使われますが、適切に使われないと耐性菌が生まれて、治療に難渋することになります。風邪などのウイルスに、抗菌薬は効果がありません。安易に抗菌薬を内服することで耐性菌が生まれやすくなります。中には処方された抗菌薬を自分の判断で減量したり、途中で中断する人がいますが、耐性菌が育ちやすい温床となりますので、医師の指示に従ってしっかりと内服する必要があります。

院内感染から医療関連感染へ

また、最近の耐性菌の拡散の仕方として、その病院のみに限定されず、患者さんが退院後に訪れる地域の医療機関や介護施設などにも拡散することが知られています。そのため、「院内感染」という言葉から、「医療関連感染」という言葉が使われ始めています。
今やグローバル化時代を迎え、多くの人が仕事やレジャーで、海外に赴く機会が増えています。国内では流行していなかった未知の病原体が数時間程度で、海外からの帰国者を介して国内、病院内にも侵入してきます。病院に体調不良でかかるときには、どこにいつまで海外旅行をしていたかも必ず伝えるようにしましょう。また、海外旅行にあたっては、流行している感染症情報を事前に調べ、旅行前に必要なワクチンの接種も心がけましょう。