特集

月刊「クリンネス」より

海外赴任に伴う感染症対策

シリーズ① 海外赴任のための健康管理 
/東京医科大学病院 渡航者医療センター 教授
濱田篤郎

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月刊クリンネス

 外務省の統計によれば、海外に仕事などで長期滞在している日本人の数は、最近では70万人を超えています。このうち先進国には40万人強、途上国に30万人弱が滞在しています。
 こうした海外に長期滞在する日本人にはさまざまな健康リスクがあります。
 第一にあげられるのが気候の変化です。日本は温帯に属しており、私たちはその気候の中で長年にわたり生活してきました。しかし、海外には過酷な気候環境も多く、それに順応できずにいると、病気になってしまいます。
 生活習慣病も重要な健康リスクです。たとえば、海外の食事は一般に肉食中心で、高カロリー、高脂肪になる傾向があります。また、海外の国々は車社会ですから、運動不足に陥りやすくなります。この結果、海外赴任中に生活習慣病を発病したり、悪化する人が多くなります。
 三番目の健康リスクとして、メンタルヘルスの問題があります。海外での生活は文化の違いや、治安の問題などストレスが多いものです。それが溜まっていくと、メンタル面の障害が起こります。
 そして四番目の健康リスクが感染症です。特に開発途上国では、気候や衛生面の問題から、感染症のリスクが高くなります。海外でリスクのある感染症には、飲食物からかかる下痢症やA型肝炎、蚊に媒介されるデング熱やマラリア、性病、狂犬病などがあります。それぞれの感染症の詳細は次回からの連載をご覧ください。
 では、海外生活での健康リスクを回避するにはどうしたらよいのでしょうか。その対策について紹介しましょう。
 まず、赴任前には健康診断を受けてください。その結果に応じて、赴任先での生活指導を医師から受けておくことをおすすめします。海外に仕事で六か月以上滞在する場合は、法的にも健診が義務付けられています。
 次に、赴任先の病気や医療機関などの情報を収集しておくことも大切です。これは外務省や検疫所などのWebサイトから検索することができます。また、最近では航空会社などが赴任前ガイダンスを実施しています。
 感染症の対策としては予防接種が重要です。どのワクチンを接種するかは、滞在する地域、滞在期間、年齢などを参考に決定します。こうしたワクチンの詳細については、本連載の第三回でご紹介します。
 カゼ薬や下痢止めといった頻度の高い病気の薬は、日本から持参することをおすすめします。持病があり、薬を定期的に服用している方は、現地でも薬が入手できるように、日本の主治医にお願いして英文の紹介状を作成してもらいましょう。
 現地に赴任して体調不良があれば、早めに医療機関を受診してください。海外でかかった医療費については、先進国では現地の医療保険、開発途上国では海外旅行保険で支払うのが一般的です。また、日本の健康保険にも海外の医療費の一部を還付する制度があります。
 最後に、帰国してから発熱や下痢など感染症を疑う症状があれば、感染症の診療をしてくれる医療機関を早めに受診しましょう。
 以上、海外赴任中の健康リスクとその対策について全般的に説明いたしました。海外でかかりやすい感染症とその対策については、次回からの連載をご覧になってください。