特集

月刊「クリンネス」より

海外赴任に伴う感染症対策

シリーズ⑩ ウイルス性出血熱 
/国立感染症研究所 ウイルス第一部
西條政幸

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月刊クリンネス

 読者の皆さんには、「ウイルス性出血熱」と聞いてもイメージが浮かばないことと思います。しかし、「エボラ出血熱」と言ったらどうでしょう。怖い病気を連想するのではないでしょうか。
 ウイルス性出血熱には、一般的にエボラ出血熱、マールブルグ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ラッサ熱などのウイルス性疾患が含まれます。少し広い意味では、デングウイルスによるデング出血熱や黄熱、ハンタウイルスによる腎症候性出血熱が含まれます。本稿においては、中でも輸入感染症として発生例が比較的多いラッサ熱、また、アジアを含めて世界的に広い範囲で流行しているクリミア・コンゴ出血熱について解説しましょう。

病気の特徴

 1967年にナイジェリアの東北部にあるラッサ村の総合病院で働いていたひとりの修道女が発熱などの症状を呈し、死亡しました。この患者から分離されたのが新規ウイルスで、ラッサウイルス(アレナウイルス科アレナウイルス属)と命名されました。このウイルスによる発熱性疾患をラッサ熱といい、出血熱症状を引き起こします。ラッサウイルスの宿主(ウイルスを宿す動物)は、西アフリカ地域に広く生息するマストミス属のネズミです。そのためラッサ熱の流行地は西アフリカ地域です。私たちの調査研究によると、ナイジェリアやガーナの人々の約15%がラッサウイルスに感染していることが明らかにされています。ネズミが尿や唾液中に排出するウイルスに感染して発症します。  一方、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(ブニヤウイルス科ナイロウイルス属)と呼ばれるウイルスに感染して、出血症状が伴う発熱性疾患を呈する疾患を、クリミア・コンゴ出血熱と呼びます。ダニからヒツジなどの動物に同ウイルスが感染すると、そこでウイルスが増え、さらにヒトがその動物に直接触れると感染します。また、ダニに咬まれても感染します。死亡率は、5〜40%とされています。この病気は、アフリカ、東欧、中近東、中央アジア、南アジアに広い地域で発生しています。北半球の流行地ではダニの活動が活発になる春から夏にかけて流行します。

感染しないように気をつける

 西アフリカで生活していると、ラッサウイルスに感染するリスクが生じます。実際、過去に西アフリカから帰国された日本人がラッサ熱を発症したことがあります。また、欧米では比較的多くの輸入例ラッサ熱患者が報告されています。西アフリカで生活する場合や旅行で同地域を訪れる場合には、居住する家にネズミが入り込まないように家の構造を整備することや、食料の保管方法を適切にすることが必要です。また、定期的に消毒作業を施すことが重要です。ネズミを捕まえても、直接触ってはいけません。クリミア・コンゴ出血熱は、流行国の都市部で生活している場合には感染する心配はありません。ただし、郊外に行ってダニに咬まれることがリスクとなります。ダニに咬まれないように心がけてください。  ウイルス性出血熱にかからないように気をつけるポイントは、動物に直接触れない、蚊やダニに咬まれないように気をつける、医療関係者が流行国の病院などで働く場合には、常にグローブなどを装着して患者の体液に触れないようにするなどの注意が必要です。