特集

月刊「クリンネス」より

海外赴任に伴う感染症対策

シリーズ⑥ 性感染症、特にHIV/エイズ 
/がん・感染症センター 都立駒込病院 感染症科
味澤篤

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月刊クリンネス

 海外赴任の際に気をつけなければならない性感染症としては、HIV感染症/エイズ、B型肝炎、梅毒、クラミジア、淋病、性器ヘルペスなどがあります。なかでもHIV感染症は、他の性感染症と異なり、重篤な合併症を起こしやすいので、感染の予防と早期発見が重要です。

HIV感染症

 HIV感染症はヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus:HIV)によって生じ、その進行した状態がエイズと呼ばれます。感染は性行為、注射針の使いまわしおよび血液製剤などでおこります。またHIVは日常生活(空気、食べ物、水など)では感染しないこともよく理解する必要があります。
 HIV感染症は世界的に見られますが、有病率が高いのはサハラ以南のアフリカ、ロシア・東欧諸国、アメリカ合衆国、南米、東南アジアです。
 HIV感染症に感染するチャンスがあった場合には、HIV抗原・抗体スクリーニング検査を受ける必要があります。感染チャンスから2か月の時点で感染の有無を明らかにすることができます。HIV感染症と診断された場合には、抗HIV薬による治療が生涯必要になります。抗HIV薬により重篤な合併症の予防が可能になり、長期間の生存が期待できます。
 デンマークからの報告では、HIV感染者の25歳時の平均余命は39年、約64歳まで生存するとされています(比較的最近治療を開始しC型肝炎に感染していない場合)。一方、HIVに感染していない場合は25歳時の平均余命が50年、約75歳まで生存するとのことです。HIV感染症の予後は、このように改善しましたが、今のところ治癒することは望めませんので、やはり感染しないことが最も重要です。
 HIV感染症を予防するためには、以下の三点が重要です。①HIV感染者あるいは感染が不明あるいは可能性が高い人(性産業従事者など)との性行為を避けること、あるいはコンドームを継続的かつ正しく使用することが大切です。②静脈麻薬や注射針の使いまわしを避けること、これはC型肝炎の感染リスクの予防にもなります。③赴任する国によっては輸血や血液製剤などの使用にも注意が必要になります(発展途上国では血液製剤に対して感染症の管理を行っていないことが多い)。

STD予防

 他の性感染症(Sexually transmitted diseases:STD)予防も重要です。淋菌感染症やクラミジア感染症をはじめ多くの性感染症はかかっても、無症状のことがよくあります。そのような状態ではHIVにもかかりやすくなります。したがって、STD感染者あるいは感染が不明あるいは可能性が高い人(性産業従事者など)との性行為は避けること、あるいはコンドームを継続的かつ正しく使用することが大切です。
 しかし、クラミジア、淋病などはHIV同様コンドームの適正な使用により予防できる可能性が高いですが、梅毒や性器ヘルペスに対する予防効果は十分証明されていません。「君子危うきに近寄らず」といった態度が大切です。