特集

月刊「クリンネス」より

日本の警戒すべき感染症
-感染症から身を守るために-

シリーズ① 感染症の基礎知識 
/バイオメディカルサイエンス研究会 理事長
小松俊彦

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月刊クリンネス

プロローグ

1980年に世界保健機関(WHO)が痘瘡(とうそう)ウイルスによって引き起こされる天然痘の世界絶滅を宣言し、人類が地球上からこのウイルス病を駆逐した例は、人類が感染症との闘いに勝利した代表的な証しと考えられていました。
しかしながら、二十世紀後半になると爆発的な人口増加と都市化による社会的活動が著しく盛んになり、世界的なレベルで交流が行われるようになったことから、感染症の世界でもこの頃からエイズの病原ウイルスなどの新しいウイルスの出現が見られるようになり、新たな感染症の問題が登場してきました。
近年、感染症の問題は、「二十一世紀は感染症との闘いの世紀」と言われるほどに、人類にとっては重要な課題の一つに位置付けられ、感染症対策に世界中の努力がなされています。このような状況を踏まえ、日本で警戒すべき感染症のシリーズ①として、感染症から身を守るために知っておきたい次の三項目を要点的に示し、以降のシリーズの参考に役立てたいと思います。

病原体の種類と病名

病原体は顕微鏡や電子顕微鏡でしか見ることのできない微生物です。種類としては形状の大きい順に、①原虫(マラリアなど)、②真菌(水虫など)、③細菌(赤痢など)、④リケッチャ(オウム病など)、⑤クラミジア(性病など)、⑥マイコプラズマ(肺炎など)、⑦ウイルス(インフルエンザなど)がある。( )内は、その病原体の感染によって引き起される病名を示します。

感染はどのようにして起るか

感染するには、三つの条件が必要となります。一つは、感染源(病原体を排泄=はいせつしている人や動物あるいは病原体に汚染された飲食物・器物)、二つ目は感染経路(感染源から排出された病原体が次の宿主に到達する経路)、三つ目は、感受性宿主(病原体に抵抗力のない人や動物)であります。これらの三つの条件の一つを遮断することによって、感染は成り立たなくなります。すなわち感染防止対策の最も基本となる事象です。

病原体の侵入を防ぐには

病原体が体内に入るには、①接触、②気道、③経口、④経皮(刺・咬傷)、⑤粘膜(性交)、⑥血液(針刺し)などの侵入部位があります。これらの侵入部位は病原体によって、選択されます。従って、侵入を防ぐには、それぞれの病原体の侵入部位あるいは感染経路の遮断対策が必要となります。その対策により、病原体の侵入を避けることができれば感染は防げることになります。
侵入を防ぐ方法としては、①病原体を死滅させる(消毒・滅菌)、②病原体との接触を避ける(手洗、マスクなどでそれぞれの侵入部位をふさぐ)、③体の免疫力を高める(ワクチン接種)などがあります。
また、インフルエンザウイルスなどの飛沫感染を防ぐには、一人ひとりが防止対策を身につけることが重要です。特に群衆や集団生活の場において、くしゃみや咳は感染の拡大を引き起こします。その際はティッシュペーパー、ハンカチなどで口をおおい、ウイルスの拡散をできるだけ少なくすることが肝要です。
この動作はくしゃみ・咳に対するエチケットとして習慣づけなくてはなりません。